監修:国際医療福祉⼤学医学部 感染症学 主任教授
国際医療福祉⼤学成⽥病院 感染制御部部⻑ 松本哲哉 先⽣
新型コロナの感染症法上の位置づけが「2類感染症」から「5類感染症」に移行したことで、 「新型コロナって、もう普通のかぜやインフルエンザと同じなんじゃない?」と考えている人はきっと多いことでしょう。実際、日常生活はコロナ前と変わらなくなってきていますし、新型コロナに関するニュースも少なくなっていますね。
しかし、法律上でインフルエンザと同じ扱いになったとはいえ、感染症学の視点からみると、まだまだ油断できる段階ではありません。新型コロナには、インフルエンザと同じ感染症だとは言えない特徴があることを知っておくとよいでしょう。
以上のような特徴を持つことから、新型コロナは依然として感染予防が必要な疾患であると言えます。決して油断せず、厚生労働省が推奨する「感染防止の5つの基本」(表)8)を継続することが大切です。
また、ワクチン定期接種の対象者である高齢者や基礎疾患のある方は、重症化を予防するための対策の1つとして、変異株にも対応したワクチン接種を検討していただければと考えています。
図1 COVID-19および季節性インフルエンザにおける死亡率(海外データ)
米国の退役軍人データベースを用いて、COVID-19入院症例(2020年3月1日から2022年6月30日)81,280例と、インフルエンザ入院症例(2015年10月1日から2019年2月28日)10,985例を最大18か月目まで追跡し、死亡、事前に規定した94の症状、10の臓器症状、すべての臓器に関する疾病負荷、再入院、ICU入院を評価した。
図2 後遺症が認められた方の割合
2021年3月30日~2022年4月30日に新型コロナウイルス感染症と診断され、都立・公社病院のコロナ後遺症相談窓口に寄せられた相談データを解析した。
表 感染防止の5つの基本
- 体調不安や症状がある場合は、無理せず自宅で療養あるいは受診を
- その場に応じたマスクの着用や咳エチケットの実施
- 換気、密集・密接・密閉(三密)の回避
- 手洗いは日常の生活習慣に
- 適度な運動、食事などの生活習慣で健やかな暮らしを
注意が必要なのはどんな人?
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以下の表に当てはまる項目がひとつでもある方は、ない方と比べて新型コロナウイルス感染症の重症化の危険性が高いことがわかっています。
年齢 |
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体型 |
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生活習慣 |
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基礎疾患(持病) | 以下のような持病や既往歴がある
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薬 |
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妊娠 |
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COPD:慢性閉塞性肺疾患、HIV:ヒト免疫不全ウイルス
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 第10.1版より作成
定期接種の実施時期 | 令和6(2024)年10月1日~令和7(2025)年3月31日 |
対象となる人 |
※心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方 |
※定期接種の対象者以外の方や、定期接種のタイミング以外で接種する場合については、 任意接種としてワクチンの接種を受けることができます。
厚生労働省. 令和6年度第1回 予防接種に係る自治体向け説明会「新型コロナワクチンの定期接種等について」(令和6年6月21日)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266569.pdf)(2024年7月11日閲覧)
出典
1)
国立感染症研究所:SARS-CoV-2変異株について (https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10745-cepr-topics.html)(2024年7月11日閲覧)
2)
厚生労働省. データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-.(https://covid19.mhlw.go.jp/)(2024年7月11日閲覧)より作図
3)
厚生労働省. 第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月21日)資料4. (https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001027743.pdf)(2024年7月11日閲覧)より作図
4)
厚生労働省. 第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会(2023年11月22日)資料1 (https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001169826.pdf)(2024年6月24日閲覧)
5)
Xie Y et al. Lancet Infect Dis. 2024 Mar; 24(3): 239-255.
6)
厚生労働省:厚生労働科学特別研究事業.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究.令和3年度 総括研究年度終了報告書. 研究代表者 福永興壱. 令和4(2022)年4月 (https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/145956)(2024年7月11日閲覧)
7)
東京都総務局:(第88回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和4年5月26日)資料12. (https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1021348/1021633.html)(2024年7月11日閲覧)
8)
厚生労働省. 第118回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年3月8日)資料3-9 (https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001069238.pdf)(2024年7月11日閲覧)