変異し続ける新型コロナウイルス

監修:国際医療福祉⼤学医学部 感染症学 主任教授

国際医療福祉⼤学成⽥病院 感染制御部部⻑ 松本哲哉 先⽣

 

今この瞬間も、新型コロナウイルスは「変異」しています1,2)

今この瞬間も、

新型コロナウイルスは

「変異」しています1,2)

一般に、ウイルスは増殖や感染を繰り返す中で少しずつ「変異」しています。「変異」とは、ウイルスが増殖する際に一定の頻度で起こる遺伝子情報のコピーミスのことで、変異により新たな性質を持ったウイルスを「変異株」といいます。新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行しましたが、ウイルスはそれとは関係なく変異を続けています。今後、感染力がさらに高まり、重症化しやすい変異株が出現する可能性は否定できませんので、新たな変異株が脅威にならないとは言い切れません。

新型コロナウイルスの変異(イメージ)

新型コロナウイルスの変異(イメージ)

新型コロナウイルスの変異(イメージ)新型コロナウイルスの変異(イメージ)

神谷 茂 監修:標準微生物学 第14版, 医学書院, p355~367

新型コロナウイルスの変異株と最近の動向

中国武漢市で最初の新型コロナウイルスが発見されてから、これまで様々な変異株が確認されてきました3)日本では、初めに中国武漢市で発見された従来株が広がり、続いてアルファ株、そしてデルタ株が流行しました4)。デルタ株は中高年層にも肺炎や血栓症を起こし、重症患者の急増による医療体制のひっ迫が課題となりました。 2022年初頭以降はオミクロン株が主流となっていますが、その大きな特徴は感染力の強さです4,5)。オミクロン株によって日本では第6波、7波、8波の流行が起こりましたが、感染の規模はそれまでと比べて格段に大きくなりました6)。重症化の割合は少なくなりましたが、多くの感染者が出たために、死者数は第8波が最も多い結果となってしまいました6)。第8波が収束して以降も、オミクロン株の派生型がいくつも確認されています7)

新型コロナウイルスの主な変異株

新型コロナウイルスの変異株と最近の動向新型コロナウイルスの変異株と最近の動向

Wang Q et al. Cell. 2023; 186(2): 279-286.e8
UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 genome sequence prevalence and growth rate update: 1 May 2024
(https://www.gov.uk/government/publications/sars-cov-2-genome-sequence-prevalence-and-growth-rate/sars-cov-2-genome-sequence-prevalence-and-growth-rate-update-1-may-2024)(2024年7月18日閲覧)より作成

 

一度感染したことがある方や

ワクチンを接種した方も

再感染する可能性があります

最近主流となっている変異株はオミクロン株の一種で、免疫から逃れる性質が強くなっていると考えられています8)。一度感染したことがある方や、ワクチンを接種した方も再感染する可能性があるため9)、特に重症化リスクが高い方は引き続き警戒が必要です。

変異株の現状

2024年7月10日時点で、KP.3系統を含むJN.1系統とその亜系統が主流となっています。

変異株の発生状況(東京都)変異株の発生状況(東京都)

民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる系統別検出状況(国立感染研究所)

新型コロナウイルス感染症は、重症化リスクの有無によって適切な対処法が異なります。

まずはご自身やご家族の重症化リスクを確認しましょう。

重症化リスクがなく軽症で済んでも、後遺症が残る可能性があります。

自分自身や家族や友人などの大切な人を守るためにも、

若い世代の方々も積極的にワクチン接種を検討しましょう。

また、感染した場合でも現在では治療の選択肢が増えてきています。あなたにあった治療法を主治医の先生とご相談ください。

注意が必要なのはどんな人?

注意が必要なのはどんな人?

注意が必要なのはどんな人?

今すぐ確認してみましょう

以下の表に当てはまる項目がひとつでもある方は、ない方と比べて新型コロナウイルス感染症の重症化の危険性が高いことがわかっています。

年齢

  • 65歳以上

体型

  • 肥満がある(BMIが30以上)

生活習慣

  • タバコを吸う(現在および過去)
  • 運動不足

基礎疾患(持病)

以下のような持病や既往歴がある

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • がん
  • 慢性の肺の病気(COPDなど)
  • 慢性の腎臓の病気
  • 心臓の血管の病気(心筋こうそく、狭心症など)
  • 脳の血管の病気(脳こうそく、脳出血など)
  • HIV感染症
  • 臓器移植による免疫不全
    など

  • ステロイド等の免疫を抑える薬を使っている

妊娠

  • 妊婦(妊娠後半期)
BMI:体格指数 [計算]BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

COPD:慢性閉塞性肺疾患、HIV:ヒト免疫不全ウイルス

厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 第10.1版より作成

あてはまる項目がある方は、

新型コロナウイルス感染症の感染に備え、取るべき行動について

かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。

あてはまる項目がある方は、

新型コロナウイルス感染症の

感染に備え、取るべき行動について

かかりつけ医に相談してみては

いかがでしょうか。

2024年秋冬に予想される
新型コロナウイルス感染症の
流行を踏まえ、ワクチンの定期接種の
方針が示されています。

2024年秋冬に予想される
新型コロナウイルス感染症
の流行を踏まえ、
ワクチンの定期接種の
方針が示されています。

定期接種の実施時期

令和6(2024)年10月1日~令和7(2025)年3月31日
(自治体ごとに上記の期間内で実施されます)

対象となる人

  • 65歳以上の方
  • 60~64歳で対象となる方

※心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方

※定期接種の対象者以外の方や、定期接種のタイミング以外で接種する場合については、 任意接種としてワクチンの接種を受けることができます。

厚生労働省. 令和6年度第1回 予防接種に係る自治体向け説明会「新型コロナワクチンの定期接種等について」(令和6年6月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266569.pdf)(2024年7月11日閲覧)

出典

  • 1)

    神谷 茂 監修:標準微生物学 第14版, 医学書院, p355~367

  • 2)

  • 3)

    Wang Q et al. Cell. 2023; 186(2): 279-286.e8

  • 4)

    厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 第10.1版

  • 5)

  • 6)

  • 7)

  • 8)

  • 9)

    Tan CY et al. Lancet Infect Dis. 2023; 23(7): 799-805

2024年9月作成 CVD46O007A